2015年05月08日

直立二足歩行する人類の発祥、有名な仮説が崩れていた

教育で練馬から世界を変える!
西武池袋線・石神井公園駅の個別指導塾FORWARD塾長、松尾直樹です。
地学トーク、続きます。

アフリカに「大地溝帯」またの名を「グレート・リフト・バレー」という地形があります。アフリカ東部を南北に縦断する長大な「谷」で、wikipediaによれば総延長(分岐を継ぎ足した長さ?)7,000キロ、幅は数十キロに及びます。アフリカ大陸の真下、地震の震源となるプレートなどよりもはるかに深い地球の深部、マントルの中に、高温の上昇流が存在し、それがアフリカ大陸を徐々に引き裂いた結果、生み出された地形です。

この「大地溝帯」実は人類の発祥と関係があるという仮説があり、説得力があるというので人気を博しておりました。曰く、アフリカ東部に生じた大地溝帯両側の山脈(火山活動なども活発になるので谷の両側は一般的にかなり隆起する)が大西洋からの湿った風を阻害するためアフリカ東部が乾燥し、森林が減退した。その結果、そこに住んでいた類人猿が木から木へうつるために大地を歩かざるを得なくなり、より長距離の歩行に適した直立二足歩行を身に付け、完全に空いた手は道具を扱うようになり、脳が発達して現在の人類が誕生した……と。これを有名な映画の「ウェストサイドストーリー」をもじって「イーストサイドストーリー」と言うんだそうです。wikipediaによれば「フランスの人類学者、イブ・コパンが1982年に提唱した」とのこと。

非常に有名な説で、小中学生向けの優しい科学本などにも(従って中学入試問題などにも)頻繁に引用され、ほぼ真実であるかのように、まことしやかに語られてきました。

が、近年この話の前提がことごとく崩れてしまい、コパン自身も撤回宣言を出したそうです。

wikipediaの「イーストサイドストーリー」の項目を参考に書き続けますが、ヒトが二足歩行を身に付けたのは600万年前頃と考えられており、大地溝帯の隆起が生じたのは800万年前……と、思いきや、800万年前に起きた隆起は小さなもので、本格的に隆起したのは400万年前くらいだと考えられるようになったそうです。
さらに、アフリカ東部の乾燥化は(当初想定されていた800万年前の話か、しっかり隆起した400万年前の話か、ちょっとよく分かりませんが……たぶん800-600万年前の話?)さほど進まず、森林は十分あったとのこと。
そして決定打は、そもそもアフリカ東部ではなくアフリカ西部から、二足歩行する上に、恐らく現生人類につながる祖先と思しき化石が見つかってしまった事です。「2002年にアフリカ西部であるチャドで600-700万年前と考えられるトューマイ猿人の化石が発見された」とのこと。このトューマイ猿人が生活していた環境は、「魚やワニの化石」が残っている事から推測して、湿潤な環境だったらしい。

つまり、人類が立ち上がった頃、山はそんなに隆起しなかったし、どこもそんなに乾燥していなかったし、そもそもその舞台はアフリカの東ですらなかった。コパンはトューマイ猿人発見の翌年には、潔く自説を撤回しています。長い間もてはやされた自説を即撤回したところは、学者として素晴らしい態度だと思います。そもそも、否定はされたものの、この仮説は地殻変動と環境変化と生物進化を結びつける壮大で野心的な仮説で、否定されたとは言え魅力的な仮説だったと私には思われます。コパン先生には、その魅力的な理論展開や、学者としての姿勢も含めて、改めて敬意を表したく思います。
posted by FORWARD-ac at 14:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 地理・地学

2015年05月05日

正断層が多い場所

教育で練馬から世界を変える!
西武池袋線・石神井公園駅の個別指導塾FORWARD塾長、松尾直樹です。

さて、本日は「有名な正断層」の話。

日本は、残念な事に、地震大国です。その原因は明らかで、日本という土地はプレートがせめぎあう土地だからです。そのため日本の国土を見回すと、地震の原因となる活断層が至る所に走っています。日本の断層は基本的に、プレートが押し合う力によって形成される、地層と地層が乗り上げて重なり合うようになった、逆断層です。私の知る範囲では、国内で正断層と言うと、僅かに九州に二筋、正断層の多い地帯があるのみです。

では逆に、世界中で正断層が多いのはどんな場所でしょうか。

有名な場所としては、アフリカ東部にアフリカ大陸を縦断するように走る「大地溝帯」と、その西側、大西洋の海底に南北に走る「大西洋中央海嶺」あたりでしょうか。「大地溝帯」は、一時期は人類の発祥と深い関わりがあるのではないかという仮説が有名でした。(今は否定されているようですが)「大西洋中央海嶺」は、恐らく地球史上最大の生物大量絶滅事件である「P-T境界事変」の原因と目されています。「大西洋中央海嶺」が裂け始めて、そこから大量の火山性噴出物が溢れ出て、地球環境が激変したため、地球上にいた生物の95%が死滅したそうです。
posted by FORWARD-ac at 10:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 地理・地学

2015年05月03日

ネパールの地震

今日は断層についての、ごく初歩的な知識をまとめた記事を投稿しましたが、ネパールの地震で多くの犠牲者が出た直後です。人の命が失われると言うのは、無念であり、また周囲の人々に堪え難い悲しみと実際的な多くの困難をもたらすものです。
犠牲者に、私なりの哀悼を捧げたく思います。
posted by FORWARD-ac at 14:57| Comment(0) | TrackBack(0) | つぶやき

日本は逆断層だらけ

教育で練馬から世界を変える!
西武池袋線沿線、石神井公園の個別指導塾FORWARD塾長、松尾直樹です。

地震の原因となる「活断層」という言葉が有名になっています。「活断層」とは、ごく大雑把に言えば「活動している断層」のことです。という事は、あまり活動していない断層も存在するわけですね。「活断層」も「活じゃない断層」も含めて、「断層」と言います。地学で勉強します。地学の教科書には、崖などに露出した断層の写真やイラストが乗っています。岩石が積み重なってできた「地層」にバキリと割れ目が走って、層がずれています。これが「断層」です。(見てみたい方は「断層」をgoogle画像検索して下さい。便利な時代です)

断層には「正断層」と「逆断層」の二種類があります。地層の積み重なった岩の重なりがあったとして、そこに力がかかって、ナナメに亀裂が走ります。そのとき、「正断層」と「逆断層」は以下のようになっています。

「正断層」
・両側に引っ張られる力が働いている
・つながっていた地層が離れるように、斜め上側の地層がずり落ちるようになっている

「逆断層」
・両側から押しつぶされる力が働いている
・つながっていた地層がズレ重なるように、斜め上側の地層がずり上がるようになっている

日本は多くのプレートがひしめき合い、押し合う力が働いている土地なので、日本のそこら中に断層は存在し、その多くが逆断層です。ただし、私の知っている範囲では九州に、鹿児島湾を引き裂いて海中から熊本南部に至る線と、島原から別府にかけて九州中北部を東西に走る線(途中やや南に阿蘇山がある)の二カ所では、正断層が見られるそうです。私のイメージですが、逆断層は大地震、正断層は巨大火山噴火の原因になりがちなように思います。
posted by FORWARD-ac at 14:35| Comment(1) | TrackBack(0) | 地理・地学